トランスジェンダーの子どもが適合手術を受けるより自殺することを望む -モンタナで起きている過激な応酬 LGBTQ-
共和党ケリー・シーキンズ・クロウ州下院議員は、トランスジェンダーの未成年者に対する、ジェンダー・アファメーション・ケア*(ジェンダーを肯定する医療)を禁止する法律 の提案者である。
*性器の切除等の不可逆的な性別適合手術や、体の成長に影響を及ぼすホルモン治療が含まれる。
クロウ議員は、自分の娘が(トランスジェンダーとは言わなかったが)「3年間自殺願望を抱えた娘と、一緒に暮らした親の一人」だと述べ、「あなたの娘を救うために、あなたは何でもしてあげるべきでは?」と聞かれたとき、本当に熟慮した結果それは「ノー」だと答えたという。
この演説を聞いていた民主党のテッド・リュウ下院議員は、「議員は、家族のために個人的な決定を下すのは政府の責任だと言っているのか」と、クロウ議員の発言に激しい非難を浴びせた。
また、クロウ議員が演説するビデオを共有したあるTwitterアカウントは、議員の言葉を過激な表現に置き換えて「モンタナ法案の提案者、トランスジェンダーの娘が性別適合することより、自殺するのを好む」と煽った。
Montana bill sponsor: I prefer my transgender daughter commit suicide rather than allow her to transition.
— The Intellectualist (@highbrow_nobrow) April 27, 2023
- Rep. Kerri Seekins-Crowe (R)pic.twitter.com/28e1aCWiR7
また、こうした動きに関連してモンタナ州下院の共和党員は、民主党員でモンタナ州初のトランスジェンダー州議会議員でモンタナ法案に反対する、ズーイー・ゼファー議員を非難する投票*を行った。
この動きは、未成年者のジェンダー・アファーメーション・ケアを制限する、反トランスジェンダー対策を支持するなら、(議会で祈りの時間に)"彼らの手は血にまみれているだろう"とゼファー議員が語った後に行われた。
*非難の理由は、直接的には法案には反対したことではなく、議会で侮辱的な発言をしたことによる。
Montana State Rep. Zooey Zephyr, the first openly-trans woman to serve in the legislature, defended her comments on a bill banning gender-affirming care for minors. The Montana House voted to bar Zephyr from the remainder of the legislative session Wednesday. pic.twitter.com/lmiqkmsB1i
— Newsweek (@Newsweek) April 26, 2023
しかし、性別違和を抱えた人が手術をしなければ必ず自殺率が上がる訳ではなく、高い数値を示したのは自殺ではなく自殺願望だ。
むしろ、適合手術後の自殺率が高いという検証結果を、イーロン・マスクが引用してTwitterに投稿し波紋を呼ぶ、という事態も生じている。
Comprehensive study in Sweden shows *increased* suicide!
— Elon Musk (@elonmusk) April 25, 2023
Death for sex-reassigned persons was higher than for controls of same birth sex, particularly death from suicide. They also had increased risk for suicide attempts and psychiatric inpatient care. https://t.co/hIakkEJvJb
この調査研究は2011年スウェーデンによるもので、検証では適合手術後に自殺が増えているという事実を認める一方で、その原因を性別移行者への"偏見や差別"によるものだとした。
その根拠として、1973年-2003年の間に適合手術 を受けた人の自殺は、減少していることを例に挙げ、1973年-2003年は、トランスジェンダー の人々の権利や社会的認知が進展した時代であることが重要で、トランスジェンダーにとって有利な環境を作りだしていったことが自殺を減らしたのだ、との分析を行っている。
だが、2003年以降もトランスジェンダーの権利はさらに進展しているため、2011年に行われた調査で、適合手術後の自殺率が高かった理由を再び 偏見や差別に求めるのは、無理があるのではないか。
家庭のことに行政が介入するべきか?という当然の疑問がある一方で、性別適合手術やホルモン治療を施すことは、不安定な思春期の感情の揺れを考慮に入れた上で、慎重に進めるべき重い決断であることに変わりはない。
事実として、不可逆的な性別適合ケアを受けることによって、後悔する人がいるというケースも報告されている。
子どもは自制心や判断力が未発達であり、経験や知識にもとづいて適切な判断ができないこともあるため、子どもの意向に沿うばかりではなく、適切な大人のサポートも必要だ。
クロウ議員:
目が覚めたとき、娘が生きているかどうかわからなかったので、床の上で何時間も祈り続けました。
しかし、私は彼女がかけがえのない成人式を迎えることができるように、彼女のために正しい決断をしなければならないと考えました。
全米ではいま、トランスジェンダーを含むLGBTQ法と反LGBTQ法の導入を巡って対立が生じ、全米各州や政府との間でも批判が繰り広げられるなどして、分断が加速している。