The Foxy's World Report

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映画史における最高の名作、『市民ケーン』の魅力とは何か?

 『市民ケーン』は、1941年に公開されたオーソン・ウェルズの監督デビュー作で、実在の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにした大富豪の波乱に満ちた一生を描いたドラマ映画である。

 この映画は映画史上における、不動のベストワン作品として高く評価されており、画誌や批評家らによる、過去の作品を対象とする映画ランキングでも、常に1位か必ず上位に入っている。*1それは、間違いなく数多くの映画作家や批評家に影響を与えてきたし、映画史にその名を刻むレガシーである。いったい、何がそんなに多くの人の心を惹きつけたのか?この作品の魅力は、以下のような点にあると言われている。

 

革新的な映像技法:

パン・フォーカス、長回し、ローアングルなどの多彩なカメラワークや照明、編集などで、ケーンの人生や心理を効果的に表現している。特に冒頭のザナドゥ城のショットや最後の遺品の燃焼シーンは有名だ。                

 

独創的なストーリー構成:

ケーンが死んだ後に残した謎の言葉「バラのつぼみ」を探るというフレームストーリーの中で、彼を知る人々の証言を通してケーンの歴史を断片的に紐解いていくという手法で、観客に推理させながら物語を展開していく。また、時系列や視点も入り乱れることで、ケーンの人物像や真実を多面的に描いている。

 

深淵なテーマ:

ケーンはすべてを手に入れた男だが、それと引き換えに孤独や不幸に陥っていく。彼は何を求めていたのか?何が彼をそうさせたのか?彼は幸せだったのか?など、人間の欲望や愛や自由などの普遍的なテーマを掘り下げている。

 

 哲学者のサルトルは、本作品を「資本主義的で忌避すべき人生観である」と批判し、結末から始まり過去に遡る視点は現在の生の躍動感に欠けると酷評した。いっぽうで、ヌーベルバーグ*2の精神的存在と言われるアンドレ・バザンが絶賛したことで作品は評価を高めていった。

 

 

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*1:市民ケーン』は英BFI発行『サイト&サウンド』誌が10年ごとに発行している「史上最高の映画」アンケートで、長年1位に渡り選出されている。また2020年には英BBCによる「史上最高のアメリカ映画100本」で1位に選ばれた。

*2:1950年末に始まったフランスにおける映画運動。自由な表現や新しい手法で個性的な作品が生まれた。